米国株は11種のセクターに分類されおり、セクター別に投資できるETFが存在しています。景気と金利などによって、成長するセクターが変わっていきます(それをセクターローテーションと言います)。その波に乗って投資する際にセクター別のETFは役立ちます。
その波に個人投資家(わたし含む)が乗るのは簡単じゃないですが・・・
下図はセクターローテーションを表したものです。景気のサイクルは時計回りに変わっていくと言われています。
この記事では米国株のセクター11種とセクター別のETFについて解説していきます。
米国株セクターの解説
セクターに含まれる業種と代表的な企業
下記の表で米国株の各セクターの業種や企業をざっくりと理解してください。
セクター | 業種 | 上位3企業 |
---|---|---|
情報技術 | コンピュータ・周辺機器、ソフトウェア、半導体・半導体製造装置、情報技術サービス、通信機器、電子装置・機器・部品 | AAPL、MSFT、V |
一般消費財 | インターネット販売・通信販売、専門小売り、ホテル・レストラン・レジャー、繊維・アパレル・贅沢品、複合小売り、家庭用耐久財、自動車、自動車部品、卸売、レジャー用品 | AMZN、TSLA、HD |
ヘルスケア | 医薬品、ヘルスケア機器・用品、バイオテクノロジー、ヘルスケア・プロバイダー、ヘルスケア・サービス、ライフサイエンス・ツール/サービス、ヘルスケア・テクノロジー | JNJ、UNH、PFE |
生活必需品 | 家庭用品、飲料、食品、食品・生活必需品小売、タバコ、パーソナル用品 | PG、KO、PEP |
素材 | 化学、容器・包装、金属・鉱業、建設資材 | LIN、SHW 、APD |
公益 | 電力、総合公益事業、水道、ガス、独立系発電事業者・エネルギー販売業者 | NEE、DUK、SO |
資本財 | 航空宇宙・防衛、機械、コングロマリット、陸運・鉄道、航空貨物・物流サービス、電気設備、建設関連製品、専門サービス、商業サービス・用品、商社・流通業、旅客航空輸送業、建設・土木 | HON、UNP、UPS |
通信 | 双方向型メディアおよびサービス、娯楽、メディア、各種電気通信サービス、無線通信サービス | GOOGL、FB、ATVI |
不動産 | REIT、不動産管理・開発、 | AMT、PLD、CCI |
金融 | 銀行、資本市場、保険、各種金融サービス、消費者金融 | BRK-B、JPM、BAC |
エネルギー | 石油・ガス・消耗燃料、エネルギー設備・サービス | XOM、CVX、PSX |
これを知っているか、知らないかでもだいぶ違います
S&P500に占める各セクターの比率
S&P500に占める各セクターの比率はステート・ストリート社が取り扱うETFのSPYで把握できます。
米国株投資するほとんどの人はS&P500(もしくは全米株式)に投資するだけで十分だと考えています。各セクターの構成比率は時価総額に準じた形で適宜リバランスされていくため、セクターローテーションを気にする必要がありません。
しかし、特定のセクターの投資を厚くしたい人にとっては、セクター別に投資できるETFは非常に使い勝手がよいです。
アマゾンは一般消費財、グーグルとフェイスブックは通信(コミュニケーション)に分類されており、ハイテク企業の比率は4割を超えています!
セクターごとのパフォーマンス比較
2021年は1位:不動産、2位:エネルギー、3位:情報技術と2020年に不調だったセクター2つが上位にきています。過去のトレンドから大きく下げたセクターや出遅れセクターは上げてくる傾向があることがわかります。
(過去のコメント)
2020年は1位:情報技術、2位:一般消費財、3位:通信とGAFAM+テスラが牽引した形になりましたが、過去のランキング推移を見るとずっと1位で居続けているセクターがないことがわかります。更にS&P500は常に平均的なパフォーマンスであることもわかります。
セクターETFの解説
米国株のセクターETFを取り扱う主な会社はバンガード社とステート・ストリート社の2社です。
バンガード社とステート・ストリート社の特徴
2社が取り扱う米国株セクターETFの違いです。
特徴 | バンガード社 | ステート・ストリート社 |
---|---|---|
組入企業規模 | 大型株、中型株、小型株 | 大型株(S&P500) |
経費率 | 0.10% | 0.10% |
純資産総額 | こちらを基準にする | 2〜4倍 |
バンガード社が全米株式(VTI)、ステート・ストリート社がS&P500(VOO)といった感じです。
また、経費率はバンガード社のほうが低かったのですが、2022年3月21日時点ではどちらも0.10%と変わりません。普段VTIとVOOのどちらに投資しているのかによって、投資するETFを変えても良いかもしれません(バンガード社が先に値下げし、その後ステートストリート社が追随する流れが多いです)。
純資産総額はステート・ストリート社の方が大きいですが、バンガード社の規模も非常に大きいため、気にするレベルではありません。ちなみに情報技術セクターだけはバンガード社の方が規模が大きいです。
情報技術セクターは新しい企業がどんどん出てきますから、中小業者も含むVGTの方が投資対象として魅力的なのかもしれません
各セクターのETF銘柄
セクター | バンガード | ステート・ストリート |
---|---|---|
情報技術 | VGT | XLK |
一般消費財 | VCR | XLY |
ヘルスケア | VHT | XLV |
生活必需品 | VDC | XLP |
素材 | VAW | XLB |
公益 | VPU | XLU |
資本財 | VIS | XLI |
通信 | VOX | XLC |
不動産 | VNQ | XLRE |
金融 | VFH | XLF |
エネルギー | VDE | XLE |
バンガード社の不動産セクターETF、VNQは楽天証券など日本の証券会社では取扱がなく、経費率も唯一0.12%となっています。
どちらの会社のETFに投資すべきか?
あくまでわたしが2020年10月〜11月時点のデータに基づいて分析して下した判断です。
タイミングや分析方法、投資方針などによって変わりますので、参考程度にご利用ください。
セクター | どちらの会社がオススメ? |
---|---|
情報技術 | バンガード社(VGT) |
一般消費財 | バンガード社(VCR)だけど、どちらでも |
ヘルスケア | バンガード社(VHT) |
生活必需品 | バンガード社(VDC) |
素材 | バンガード社(VAW) |
公益 | バンガード社(VPU)だけど、どちらでも |
資本財 | バンガード社(VIS)だけど、どちらでも |
通信 | バンガード社(VOX) |
不動産 | ステート・ストリート社(XLRE) |
金融 | バンガード社(VFH) |
エネルギー | ステート・ストリート社(XLE) |
全米株式>S&P500とも言えるかもしれませんが大きな差はありません
セクター別の配当利回り
2022年3月21日にブルームバーグで調査。
セクター | バンガード | ステート・ストリート |
---|---|---|
情報技術 | 0.81% | 0.74% |
一般消費財 | 0.86% | 0.61% |
ヘルスケア | 1.28% | 1.24% |
生活必需品 | 2.61% | 1.81% |
素材 | 1.74% | 1.50% |
公益 | 2.76% | 2.65% |
資本財 | 1.24% | 1.32% |
通信 | 1.56% | 1.01% |
不動産 | 3.96% | 2.27% |
金融 | 2.14% | 1.56% |
エネルギー | 3.65% | 3.79% |
配当利回りは株価が下がると高くなりがちです。また、高成長企業の多い、情報技術セクターや一般消費財セクターは株主還元は配当ではなく、株価上昇で還元する考え方のため低くなっています。
エネルギーセクターの配当利回りが凄く高いですが、配当金の水準をキープしつつ、株価が大きく下がったことが影響しています。今後、株価が回復していく局面では配当利回りは3%前後まで下がる見込です。(2020年12月29日に記載したコメントを2022年3月21日修正)
詳細は【VDE・XLE】米国エネルギーセクターETF2種を徹底比較を読んでみてください。
ろじゃじろうオススメのセクターETF
最後にわたしがおすすめする米国株セクターETFです。
ロジャーズ次郎の秘密のポートフォリオ5種にも組み入れている3銘柄です。
米国情報技術セクターETF(VGT)
詳細な理由は下記の記事を読んでみてください
米国ヘルスケアセクターETF(VHT)
詳細な理由は下記の記事を読んでみてください
米国生活必需品セクターETF(VDC)
詳細な理由は下記の記事を読んでみてください
まとめ
米国株のセクターETFについて解説をしてきました。
わたしは米国への投資は以下の順番でやっていくのがよいと考えています。
- スタートS&P500(VOO) or 全米株式(VTI)
- 慣れてきたセクターETF
- 中級者以上個別株、テーマ別ETF
全体から個別にブレイクダウンしていくことで、全体像をわかった上で個別株を見ることができるようになり、近視眼的な投資にならずに済むのではないかと考えているためです。
個別株やテーマ別ETFのほうが短期で2倍、3倍と爆益をもたらしてくれる可能性があり、キラキラしている世界のようにも見えるかもしれません。しかし、それは裏返せば半分、3分の1になる可能性もあるということです。
投資を始めたばかりの人は株価が下落することに対しての耐性が低いですし、いきなり個別株に手を出して株式市場から退場しないようにするためにも、インデックス投資からスタートすることをおすすめします。
これはわたしの原体験(15年前くらい)から来るものです。
上場廃止になって紙切れになった経験もしましたし、(勤務先の株で)テンバガーも経験していますが、それらを踏まえた結果、わたしはインデックス投資(セクター含む)で十分であるという判断に至りました。
これは目指しているリターンが年間3%という目標であることが上げられます。
投資をする目的によって投資スタイルは無限にありますが、本記事を投資の参考にしていただければ幸いです。
みなさんのポートフォリオを考える際の一助になれば幸いです
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