年金の繰下げ受給は得?損益分岐と注意点【2026年版】

年金受給を繰り下げるとお得かを検証してみた 資産形成の考え方

年金の繰下げ受給は、長生きしたときの毎年の収入を増やす仕組みです。1か月遅らせるごとに0.7%増え、対象者は75歳まで繰り下げると最大84%増えます。ただし、増額率だけを見て「遅らせるほど得」とは決められません。

2026年8月更新
日本年金機構の現行制度に合わせて全面更新しました。税金、社会保険料、加給年金、手元資金も含めて判断します。

繰下げ受給の増額率

受給開始 増額率
66歳 8.4%
67歳 16.8%
68歳 25.2%
69歳 33.6%
70歳 42.0%
75歳 84.0%

増額率は原則として生涯続き、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることもできます。対象となる生年月日などの条件があるため、詳細は日本年金機構の「年金の繰下げ受給」で確認してください。

単純な損益分岐だけで決めない

税金や社会保険料を無視した単純計算では、70歳開始はおよそ82歳、75歳開始はおよそ87歳で、65歳開始の累計受取額に追いつきます。

ただし、実際の損益分岐は人によって変わります。増えた年金によって所得税・住民税、医療保険・介護保険の保険料や自己負担が増える場合があるためです。寿命を当てる計算ではなく、長生きしても生活費を賄える終身収入を増やしたいかで考えます。

繰下げが合いやすい人

  • 65歳以降も給与などの収入がある
  • 年金を受け取らなくても生活できる現預金がある
  • 長生きしたときの毎月収入を厚くしたい
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金を分けて調整したい

慎重に考えたい人

  • 65歳時点で生活費に余裕がない
  • 年金を待つ間に、値動きの大きい資産を取り崩す必要がある
  • 健康状態から早めの受給を重視している
  • 加給年金や振替加算への影響が大きい
  • 増額後の税・社会保険料を確認していない

加給年金額や振替加算額は繰下げによる増額の対象ではありません。また、在職老齢年金により支給停止された部分など、増額対象にならない金額があります。

65歳時点で一度に決めなくてもよい

繰下げ受給は「65歳か75歳か」の二択ではありません。66歳以後、月単位で開始時期を選べます。基礎年金だけ繰り下げ、厚生年金は受け取るといった分け方も可能です。

家計の支出、預金残高、働く期間が変わったら、その時点で開始を検討できます。自分の生活費は平均値ではなく、家計簿の実績から確認する方が確実です。

投資を続けるために年金を遅らせるべきか

「投資の期待利回りが高いから、年金を繰り下げて資産を運用し続ける」という考え方には注意が必要です。投資の利回りは不確実ですが、繰下げによる増額率は制度条件の範囲で決まります。

一方、年金を待つ間の生活費を株式売却で賄う場合、下落時に安値で取り崩すリスクがあります。現金・債券・株式のどこから生活費を出すかまで含めて判断します。

判断前のチェックリスト

  • ねんきんネットで65歳開始と繰下げ後の見込額を確認したか
  • 年金なしで暮らす期間の生活費を確保できるか
  • 加給年金・振替加算の有無を確認したか
  • 税金と健康保険・介護保険への影響を確認したか
  • 配偶者の年金、退職金、企業年金も一覧にしたか
  • 基礎年金と厚生年金を分ける選択も比較したか

まとめ

繰下げ受給は、増額率の高さを競う制度ではなく、長生きしたときの収入を補強する選択肢です。手元資金が足りないのに無理に待つ必要はありません。

年金見込額、実際の生活費、税・社会保険料、手元資金を並べ、月単位で開始時期を決める。これが2026年時点の現実的な考え方です。

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