【2026年8月全面更新】米国債券ETF10種を、「国債か社債か」「期間は短いか長いか」「ポートフォリオで何の役割を持たせるか」で整理しました。経費率は運用会社の公式情報を確認しています。
米国債券ETFは、「債券だから安全」とひとくくりにはできません。残存期間が長いほど金利の変化に敏感になり、社債には発行企業の信用リスクが加わります。
先に結論を言うと、中核の債券ETFを1本で持ちたいならAGG、金利変動の影響を抑えたいならSHY・BSV・VCSH、株式急落時の値上がりを期待してより大きな金利リスクを取るならTLTが比較対象になります。用途が決まっていないまま、直近の分配利回りだけで選ぶのは避けたいところです。
米国債券ETF10種の比較表
| ETF | 主な投資対象 | 期間の目安 | 経費率 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| SHY | 米国債 | 1〜3年 | 0.15% | 金利感応度が低く、価格変動を抑えやすい |
| IEF | 米国債 | 7〜10年 | 0.15% | 短期国債と長期国債の中間 |
| TLT | 米国債 | 20年超 | 0.15% | 金利変動に非常に敏感。値動きは大きい |
| VCSH | 投資適格社債 | 1〜5年 | 0.03% | 短期社債。国債より信用リスクがある |
| IGIB | 投資適格社債 | 5〜10年 | 0.04% | 中期の社債。金利と信用の両方に影響される |
| VCLT | 投資適格社債 | 10年超 | 0.03% | 長期社債。金利リスクと信用リスクが大きい |
| BSV | 国債・社債など | 1〜5年 | 0.03% | 短期の分散債券。価格変動を抑えやすい |
| BIV | 国債・社債など | 5〜10年 | 0.03% | 中期の分散債券 |
| BLV | 国債・社債など | 10年超 | 0.03% | 長期の分散債券。金利感応度が高い |
| AGG | 米国投資適格債券市場 | 幅広い | 0.03% | 国債、MBS、社債などを1本で幅広く保有 |
各ETFの期間区分は、そのETFが組み入れる債券の満期の目安です。ETF自体に満期はなく、債券を入れ替えながら運用されます。個別の債券を満期まで持つのとは値動きが異なります。
選ぶ前に理解したい4つのリスク
1.金利リスク
市場金利が上がると、低い利率で発行された既存債券の価格は下がります。そして一般に満期までの期間が長いほど、価格の反応は大きくなります。SECの債券ファンドに関する説明でも、長期ほど金利リスクが高いことが示されています。
例えばTLTの実効デュレーションは2026年7月時点で15.10年。金利が1ポイント動いたときの価格影響が小さくないことが分かります。実際の価格変動は単純計算とは一致しませんが、TLTを「現金に近い守りの資産」と考えるのは適切ではありません。
2.信用リスク
社債は、発行企業が利息や元本を支払えなくなるリスクを含みます。景気後退や金融不安では国債と社債の利回り差が拡大し、社債ETFの価格が下がることがあります。株式と同時に値下がりする場面も想定が必要です。
3.MBSの繰上償還リスク
AGGには住宅ローン担保証券(MBS)も含まれます。金利が下がると住宅ローンの借り換えが増え、投資家に元本が予想より早く戻ることがあります。単純な国債とはキャッシュフローが異なります。
4.為替リスク
米ドル建てETFを円で評価する場合、ETF価格に加えてドル円レートが手取りに影響します。債券部分に値動きの緩衝材としての役割を期待するなら、為替ヘッジの有無まで含めて考える必要があります。
目的別の選び方
価格変動をできるだけ抑えたい
SHY、BSV、VCSHなどの短期債ETFが候補です。ただしVCSHは社債のため、信用リスクを避けたいならSHYの方が目的に合います。数年以内に使う予定のお金は、ETFではなく預金や個人向け国債と比較するべきです。
ポートフォリオの中核を1本で持ちたい
AGGは米国の投資適格債券市場を幅広く保有します。経費率0.03%で、国債・MBS・社債などへの分散を1本で実現しやすいのが利点です。一方、米ドル建てであり、価格変動もあるため、生活防衛資金の代わりではありません。
株式下落時の逆相関を期待したい
TLTは成長鈍化と金利低下が同時に進む局面で大きく値上がりする可能性があります。しかし、インフレと金利上昇が株式と債券の両方を押し下げる局面もあります。「株式が下がれば必ずTLTが上がる」という関係ではありません。
利回りを上げたい
社債ETFは国債より利回りが高くなりやすい代わりに、信用リスクを取ります。そのリスクプレミアが、株式も同時に持つポートフォリオ全体の分散に本当に役立つのかを考える必要があります。
2026年の金利水準をどう見るか
2026年8月14日時点の米国財務省イールドカーブは、2年4.17%、10年4.68%、30年5.25%です。長期ほど利回りは高いものの、長期債の追加利回りは、金利変動による大きな価格変動を引き受ける対価でもあります。
「利回りが高いから長期債」ではなく、保有期間と値下がりに耐えられる幅を先に決め、その後に利回りを比較する順番が合理的です。
経費率だけでは決められない
0.03%と0.15%の差は、100万円あたり年間1,200円程度です。コストは低い方が有利ですが、期間や信用リスクの違うETFを経費率だけで比べるべきではありません。金利が大きく動くと、数年分の経費率差を上回る価格差が短期間で生じます。
公式情報の確認先
- iShares ETF一覧:SHY、IEF、TLT、IGIB、AGGの経費率や運用情報
- iShares AGG:投資対象、利回り、デュレーションなど
- Vanguard BSVファクトシート:経費率、債券数、デュレーションなど
- Vanguard VCLT運用資料:運用成績、経費率、信用品質など
まとめ
米国債券ETFは、ティッカーより先に「国債か社債か」「短期か長期か」「何の目的で持つか」を決めると選びやすくなります。
- 価格変動を抑えたい:SHY、BSV、VCSHを比較
- 幅広い投資適格債券を1本で:AGG
- 中期の金利リスクを取る:IEF、BIV、IGIB
- 長期債の大きな値動きを理解して持つ:TLT、BLV、VCLT
守りを目的に債券を入れるのに、利回りを求めて長期債や社債に偏りすぎると、当初の目的から離れます。先にポートフォリオ内の役割を言葉にし、その役割に最も近いETFを選びましょう。
債券と株式、金などを組み合わせる考え方は、オールシーズンズ戦略の解説も参考にしてください。
本記事は情報提供を目的とし、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。利回り、デュレーション、保有銘柄は変動するため、取引前に運用会社の最新資料を確認してください。



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