VFHまたはXLFというETFで米国金融セクターに投資することができます。
VFHはバンガード社、XLFはステート・ストリート社が取り扱うETFです
この2社が運用する米国金融セクターETFは、構成銘柄やコストなど異なります。これらの違いがパフォーマンスに影響を与えることがあるため、ETFの選定はしっかりとおこないましょう。
今回、VFHとXLFの2種を比較した結果、VFHに投資する方がよいと結論づけました。ただし、金融セクターは投資する難易度の高いセクターだなと感じており、(他セクター以上に)よく考えて投資しなければ損する確率が高まりそうです。
さっそく、その理由について解説していきます。
米国金融セクターETF(VFH・XLF)の概要
特に断りがなければ、2020年11月30日時点のデータを利用しています。
米国金融セクターとは?
米国金融セクターとは、銀行、資本市場、保険などの米国企業が属するグループです。
資本市場とは主に株式や社債の証券市場を指します
VFH・XLFの概要をチェックする
検証項目 | VFH | XLF |
---|---|---|
運用会社 | バンガード | ステート・ストリート |
設定日 | 2004年01月26日 | 1998年12月16日 |
組入銘柄数 | 416 | 65 |
純資産総額 | 73.1 億ドル | 238.6 億ドル |
経費率 | 0.10% | 0.12% |
直近配当利回り | 2.27% | 1.98% |
ステート・ストリート社のXLFの純資産総額はVOXの3倍以上あります。一方のVFHの純資産総額も7000億円以上と非常に大きな規模のETFです。
楽天証券で投資信託ランキング1位のeMAXISSlim米国株式(S&P500)が2000億円なので、その規模の大きさがおわかりいただけるかと思います
ちなみにバンガード社のETFは経費率が低いことが有名ですが、ステート・ストリート社も対抗して経費率を下げており、大きな差がありませんでした。
配当利回りは2%前後とそれなりにもらえるようです。
ベンチマークする指数の違い
特徴 | VOX | XLC |
---|---|---|
ベンチマーク | MSCI USインベスタブル・マーケット・金融25/50インデックス | 金融セレクト・セクター指数 |
組入銘柄数 | 416 | 65 |
企業規模 | 大型株、中型株、小型株 | 大型株(S&P500) |
ここでは組入銘柄数と企業規模の違いを知っていただければ大丈夫です!
全米株式(VTI)とS&P500(VOO)のような関係性です
組入銘柄の重複率
時価総額ベースでの組入銘柄の重複率は75%です。
業種比率の違い
VFHセクター | VFH | XLF | XLFセクター |
---|---|---|---|
都市銀行 | 22.8% | 36.1% | 銀行 |
地方銀行 | 13.8% | ||
取引所およびデータ提供会社 | 9.5% | 26.4% | 資本市場 |
資産運用会社・資産管理銀行 | 9.4% | ||
マルチセクター持株会社 | 8.8% | ||
損害保険 | 8.3% | 18.0% | 保険 |
保険ブローカー | 4.5% | ||
生命保険・健康保険 | 4.2% | ||
総合保険 | 1.8% | ||
再保険 | 1.0% | ||
投資銀行・証券会社 | 7.4% | 14.5% | 各種金融サービス |
モーゲージ不動産投資信託(REIT) | 1.5% | ||
貯蓄・抵当・不動産金融 | 1.2% | ||
他の各種金融サービス | 0.5% | ||
消費者金融 | 5.3% | 5.0% | 消費者金融 |
多少の違いはありますが、業種比率に大きな違いはありません。
構成銘柄の違い
左端のrankはVFH、右端のrankはXLFを指しています。
rank | 保有銘柄 | シンボル | VFH | XLF | rank |
---|---|---|---|---|---|
1 | JPMorgan Chase & Co. | JPM | 9.5% | 11.5% | 2 |
2 | Berkshire Hathaway Inc. Class B | BRK.B | 8.5% | 14.5% | 1 |
3 | Bank of America Corp. | BAC | 5.8% | 6.9% | 3 |
4 | Citigroup Inc. | C | 3.0% | 3.7% | 4 |
5 | Wells Fargo & Co. | WFC | 2.8% | 3.6% | 5 |
6 | BlackRock Inc. | BLK | 2.8% | 3.2% | 6 |
7 | S&P Global Inc. | SPGI | 2.2% | 2.7% | 8 |
8 | Morgan Stanley | MS | 2.2% | 2.8% | 7 |
9 | American Express Co. | AXP | 2.2% | 2.5% | 10 |
10 | Goldman Sachs Group Inc. | GS | 2.0% | 2.5% | 9 |
11 | Charles Schwab Corp. | SCHW | 2.0% | 2.3% | 11 |
12 | Chubb Ltd. | CB | 1.8% | 2.1% | 12 |
13 | CME Group Inc. | CME | 1.7% | 2.0% | 13 |
14 | Truist Financial Corp. | TFC | 1.7% | 2.0% | 14 |
15 | PNC Financial Services Group Inc. | PNC | 1.6% | 1.9% | 17 |
16 | US Bancorp | USB | 1.6% | 1.9% | 15 |
17 | Marsh & McLennan Cos. Inc. | MMC | 1.5% | 1.9% | 18 |
18 | Intercontinental Exchange Inc. | ICE | 1.5% | 1.9% | 16 |
19 | Progressive Corp. | PGR | 1.4% | 1.6% | 19 |
20 | Moody’s Corp. | MCO | 1.3% | 1.5% | 21 |
TOP20 | – | – | 57.0% | 72.9% | TOP20 |
トップ20にランクインした銘柄は殆ど変わりませんでしたが、XLFの方が構成銘柄数が少ないこともあり、TOP20に占める比率は7割と高くなりました。
現在の株価
VFHとXLFの現在の株価とチャートです。
米国金融セクターETF(VFH・XLF)のパフォーマンス
結局はパフォーマンスが全てということでバックテストをしてみました(過去と未来の結果が同じ保証はないため、バックテストはあくまで参考までに)。
検証ツール
このブログではおなじみのポートフォリオビジュアライザーを用いて、パフォーマンスの比較をします。無料ツールとは思えない機能なので、知らない方は利用してみてください。
検証条件
検証期間:2004年2月〜2020年11月
配当金:再投資
検証結果
VFHの方がXLFよりはパフォーマンスは高かったです。
また、VFH、XLFともにS&P500を大きく下回るパフォーマンスでした。
リーマン・ショック時の下落はVFHが約75%、XLFが約80%と凄い
ちなみに年単位で比較すると勝ち負けがあるようです。
XLFはリーマン・ショック時にVFHよりも大きく下げたため、その後数年間で戻し幅が大きく、パフォーマンスが高い期間があります(2009年、2012年〜2014年)。直近のコロナショックではVFHの下げの方が大きいことから、同じロジックが通用する場合は、2021年以降に戻す余地が大きいのではないかと考えられます。
今から金融セクターETFに投資するならVFHかも?
まとめ
2つの銘柄を比較した場合の結論としてはVFHの方がよさそうですが、個人的には長期的なポートフォリオに組み込みたいセクターではないと思いました。
年単位のパフォーマンスがマイナスになった翌年はプラスになっていますし(リーマンショック時は2年後)、2021年はプラスになるのではないかと思います。ただし、ワクチンができたとはいえ、経済が回復しているわけではなく、低金利が続く局面であることから、今後の見通しを踏まえての投資が必要そうです。
わたしの中で金融セクターは短期で売買する、もしくは高配当株ような感じでタイミングを見計らって積立ていく銘柄であると感じました(その割に高配当というほどでもない)。よって、投資初心者がポートフォリオに入れるのには難易度が高いと思っています。
米国金融セクターへの投資は楽天証券、SBI証券、マネックス証券などで可能です。
米国株11種のセクターETFのまとめ記事もどうぞ!
みなさんの投資の一助になれば幸いです
おまけ
世界中の資本財セクターに投資するグローバル金融 ETF(IXG)というブラックロック社が運用するETFもあります。
投資対象国 | 保有比率(%) |
---|---|
米国 | 48.18 |
カナダ | 7.82 |
イギリス | 6.07 |
オーストラリア | 5.54 |
日本 | 4.41 |
中国 | 3.75 |
スイス | 3.47 |
ドイツ | 3.26 |
香港 | 3.19 |
フランス | 2.27 |
スウェーデン | 1.98 |
ブラジル | 1.51 |
イタリア | 1.48 |
スペイン | 1.46 |
シンガポール | 1.37 |
キャッシュ、デリバティブ等 | 0.33 |
その他 | 3.91 |
世界中に投資先が分散されている点はよいのですが、パフォーマンスは今回紹介した2種のETFよりも悪く、更に経費率が0.46%と高いため、わたし自身は積極的に投資したいとは思えませんでした。
しかし、過去にはS&P500や今回紹介した2種をアウトパフォームするタイミングもありましたし、今後アメリカ以外の国に資金がローテーションされていくと考えるのであれば、2〜3年くらいの間は投資対象として面白いかもしれません(わたしは投資しないと思いますが)。
米国株11種のセクターETFについて分析した記事もどうぞ!
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